東北大学で指導していた修士学生(現東北大博士課程)の陳凌寒君の論文が受理されました。受け持ったときは修士1年生の学生ということで一から実験操作、データ取得や論文の書きかたなどを指導させて頂きました。学生指導に不慣れな部分があり苦労しましたが学生が成長していく姿が見れて楽しい期間でもありました。研究の世界では実力が物を言う世界であり、研究者の努力が結実することはそれほど多くありませんが、今回は学生の努力が著名な雑誌に認められるという最高の終わり方で非常に喜ばしいことです。というのも査読(審査)に要した期間が合計1年くらいほどあり駄目かなと思った矢先の受理でした。本当によかったです。これで東北大に残してきた学生関連の仕事は全て消化しました。本成果は私のさきがけ研究で注力したテーマであったため、きちんとした成果が得られてよかったと思います。
簡単な研究内容
グラフェンに化学元素をドープすると触媒能力が上がりますが電気伝導度が減少します。触媒自身の触媒能力が高くても電子を運搬する能力である電気伝導度が低いと、全体的な触媒性能は落ちてしまうことが知られています。つまり、化学元素のドープによる触媒能力と電気伝導度は全体の触媒性能を決定する上でトレードオフの関係を持っています。本研究では高い触媒性能(高い化学元素ドープレベル)を持ったまま高い電気伝導度を維持する方法を考えました。それは図のように高い電気伝導度を持つ3次元グラフェンの上に高い触媒能力(化学ドープグラフェン)を持つコブ状のグラフェンをドープすることで触媒能力を担う部分と電気伝導度を担う部分に分離する方法を開発しました。これにより、電気伝導度を損なうことなく触媒本来が持つ性能を発揮できる新しい階層構造を持った3次元グラフェンによる水素発生電極の開発に繋がりました。
図 階層構造を持ったグラフェン。大きな多孔質グラフェンの上に小さなコブの化学ドープグラフェンが乗った状態の電子顕微鏡像。元素マッピングからコブのグラフェンが化学ドープされていることが示されている。
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伊藤良一