次世代型革新高出力蓄電池
「金属触媒フリーリチウム空気電池」の開発

伊藤 良一
(東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR) 助教、現在、筑波大学 数理物質系 准教授

2015年9月18日金曜日

東大面接&さきがけ面接合否

当落
東大教員 不採用
さきがけ研究員 採用内定

東大面接
予想通りの結果に終わりました。初めての独立ポジションの面接ということもあり、自分の至らぬところや今後どうすればいいのかが鮮明となりとても良い勉強をさせていただきました。選考していただいた教授方に感謝をしつつ、今回の面接の反省を次回の面接に生かしたいと思います。

さきがけ面接
JST科学技術振興機構のプロジェクトであるさきがけ「再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出」の3期生として内定を頂くことになりました。本研究提案採択は、これまでご指導をしていただいた教授陣、研究をサポートしていただいた多くの同僚、そして、本学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)のおかげです。ご指導・ご支援をしていただいた恩に報いるためにも、さきがけ研究総括と共に税金を無駄にしないよう頑張って研究を行い、少しでも日本のエネルギー諸問題解決に向けて科学技術面から真剣に取り組んでいく所存です。

私がさきがけプロジェクトで担当する概要
再生可能エネルギーは天候や環境などに大きく左右されるため発電のため不安定供給が難しく(例えば、曇ったら発電できない)、また、電力消費地から遠い僻地での発電は発電地と都市を繋ぐ送電コストが高く、折角発電した電力が有効に使われないという問題点がありました。このような有効活用されていない電力をエネルギーキャリア(水素、アンモニア、メタンなどの分子)という形に一旦変換し、保存&運搬をしようというのがエネルギーキャリアの主旨の一つだと考えています。つまり、電気は貯められませんがエネルギーキャリアに一旦変換してしまえば、長期保存&圧縮運搬が可能になります。このような電気の貯蓄を可能にする基盤技術の開発を目指します。この基盤技術が理想的に完成した暁には、例えば再生可能エネルギーから水素生産が可能となり燃料電池車普及に必要とされている水素ステーション等の水素供給源の一つになると期待されています。

再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出
平成27年度 戦略的創造研究推進事業(さきがけ)の新規研究課題及び評価者について(第1期)


伊藤良一

2015年9月5日土曜日

論文紹介:大容量の蓄電が可能な「リチウム空気電池」用電極材料の開発

今回、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業の一環として、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の陳研究室から私が開発しているナノ多孔質グラフェンを使った高性能なリチウム空気電池の開発に成功しました。現在の電気自動車に使われているリチウムイオン電池の電気容量では、200 km程度しか走行できず、ガソリン車並に走行距離を伸ばすために新しいタイプの大容量の蓄電池の開発が望まれています。次世代電池は液漏れしない安全な全固体電池と確実視されていますが、このリチウム空気電池は全固体電池のさらに次の世代の革新的電池と期待されている一つの蓄電池であり、理論的な走行距離は500-1000 kmといわれています。本論文は1回の充電で500-600 km走行でき、かつ、100回以上充電できるプロトタイプ電池を報告したものであり、現在発表されているリチウム空気電池の中では世界最高レベルの性能です。まだまだ基礎的な課題が多く実用化には10年くらいの期間を要すると予想されていますが、今後は企業と連携しながら実用化に向けた更なる基礎研究の完成を目指していきます。

詳細はこちらのプレスリリースに記載されています。


図1 リチウム空気電池とその予想されている反応メカニズム
(a) リチウム空気電池の動作原理。
(b) コイン型電池を用いた実物大のリチウム空気電池の写真。
(c) ナノ多孔質グラフェン電極上の化学反応の様子と表面で行われているとされる化学反応式。

論文は・・・残念ながら有料公開です。

タイトル
3D Nanoporous Nitrogen-Doped Graphene with Encapsulated RuO2 Nanoparticles for Li–O2 Battery
雑誌のサイト


伊藤良一

2015年9月4日金曜日

やさしい科学セミナー開催@東北大学WPI-AIMR

9月2日に東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)にてやさしい科学セミナーを開催いたしました。対象は宮城県仙台第一高等学校の化学部と物理部の高校生合計20名でした。宮城県のトップランクの高校、かつ、化学部と物理部所属ということもあって講義の内容に踏み込んだ鋭い質問が多く、非常に利発で将来に期待が持てる有望な学生達でした。今回のセミナーは山田道夫先生(2015年度採択)のアンケートの結果にある「分断されている教科(例えば数学、物理、化学)が大学進学後どのように繋がっていくのか」を意識して準備を進めました。本セミナーを通じて少しでも科学の面白さを伝えられて大学院で行われている先端研究に興味を持って頂けたら幸いです。定員オーバーで参加できなかった方もYoutubeで少しでも最先端研究の一端に触れていただければと思います。また、このような科学セミナーを通じて日本の将来を担う若い世代に、研究職や大学進学への動機や活力になれば嬉しいです。

内容については理解をしてもらうことを優先にかなり噛み砕いて説明しましたので突っ込みどころがありますが、Youtubeのほうを見ていただくと今回のセミナーの様子がわかると思います。また、セミナーの写真をいくつか掲載しておきます。




講義中の写真




実験中の写真


宮城県仙台第一高等学校の化学部と物理部の高校生達との集合写真


今回は実験補助スタッフとして
東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR) 藤田武志准教授
東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR) 杉山一生特別研究員(PD)
東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR) 韓久慧(Jiuhui Han)東北大学総長特別奨学生(博士課程)
のサポートを受けて開催されました。


最後に、お忙しい中来ていただいた一高生の皆様、準備を手伝ってくださった顧問の先生、AIMRアウトリーチの皆様、国際科学技術財団皆様ありがとうございました!
そして宣伝ですが、東北大学オープンキャンパス片平祭りでも同じようなデモンストレーションを行います。今回機会を逃した方、興味が出た方、是非片平祭りではWPI-AIMRの研究所に見学に来てください。

伊藤良一