次世代型革新高出力蓄電池
「金属触媒フリーリチウム空気電池」の開発

伊藤 良一
(東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR) 助教、現在、筑波大学 数理物質系 准教授

2016年1月25日月曜日

さきがけ成果の特許申請

通常、科研費などの研究費で得られた研究成果は学会発表や論文発表をして年度末に成果報告を行うのですが、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)から頂いてる研究費を使っている場合は科研費などとは研究成果報告のプロセスが異なります。JSTからのプロジェクト研究では、論文発表をする前にまず特許申請を先に済ますのが大前提になっています。これは論文発表を先にしてしまうと「公知」になってしまい、特許性が失われ特許申請が出来なくなるからです。また、JSTは税金で行われた研究成果はきちんと社会に還元するという方針に則ってるからでもあります。

私も2015年10月から開始したJST-さきがけ「エネルギーキャリア」研究領域の成果がまとまりつつあるので論文発表の前に特許出願準備を行っています。特許出願は大学の知財部門と弁理士(有料)の力を借りますが、研究者個人が色々がやらなければならず、不慣れなルールと日本語で書かれているのに何が書いているかよくわからない書類の山です。税金でまかなわれている研究費を適切に運用することは研究以外の責任が増え、社会的責任を果たすために忙しくなるのだなと感じる日々でした。

伊藤良一

2016年1月14日木曜日

学術賞初挑戦

東北の財団から学術賞の2次選考の通知が来ましたので正月明け早々に面接に行ってきました。会場に入ると偉い役職の方々がコの字で待ち構えておりました。今回、企業の審査員の前での初発表で緊張するかと思えば、全く緊張せずとても良い状態で面接に望むことが出来ました。さきがけ面接はこんなに緊張したのはいつ以来だろうと思うくらい緊張しましたが、30代前半で一番大きな予算をもらえるさきがけ面接を潜り抜ければ怖いものなしということでしょうか。発表内容も質問内容も学術というよりも企業よりな内容、実用性、コスト、本当に商品化できるのかなど新鮮な面接となりました。審査していただいた役員の方々には貴重なお時間を頂き、良い勉強をさせていただきました!結果は2月に通知されるとのことで楽しみです。


伊藤良一

2016年1月1日金曜日

論文紹介:酸化還元した3次元グラフェンを用いた高感度光検出器

 今回、東北大学東北大学原子分子材料科学高等研究機構 (AIMR)で研究を進めている3次元ナノ多孔質グラフェンを用いて光検出センサーに使用可能な多孔質炭素材料の開発に成功しました。
 光に応答して電気を流す炭素材料は安価で環境にやさしい光検出のセンサーとして活用することが可能です。例えば、照度センサーでは光の明るさを電流の値として読み込むことによって自動的に照明の明るさを変更する用途で使用されています。本研究は、厚さのある3次元多孔質グラフェンを光検出部として使用することで、従来の2次元グラフェンの光吸収率と較べて10倍以上向上させることに成功しました。さらにその高い光吸収効率によってシリコン光検出器の10倍程度の感度を持たせることに成功しました。これは従来の光検出用2次元グラフェンは化学処理の過程で1枚のシート形状から細切れの破片になってしまうために、破片間を電子が飛びながら移動している為エネルギー効率が悪く、本来持っている性能を十分に発揮できないという問題点がありました。今回1枚に連続した3次元構造を保持し、かつ、多孔質構造による効率的な光吸収が可能な3次元ナノ多孔質酸化還元グラフェンを用いることによって電子がスムーズに移動することが可能になり、また、多孔質構造を持っていることから光の捕集能力そのものも炭素原子1個分の厚さしか持たない1枚のグラフェンに較べて格段に上昇し、その結果、光応答感度が劇的に上昇したと考えられます。この感度の向上により更なる装置の小型化が期待されます。


図(a) 酸化前の黒いナノ多孔質グラフェン、酸化後の白いナノ多孔質グラフェン(GO)、および、還元した酸化したナノ多孔質グラフェン(RGO)と走行型電子顕微鏡像. ナノ多孔質グラフェンの厚さは30μm. (b) 酸化グラフェンの透過型電子顕微鏡像. (c) 透過型電子顕微鏡高分解像. (d) 酸化グラフェンの炭素と酸素のサブナノメートル元素マッピング. (e) 電子エネルギー損失分光スペクトルによる炭素結合の状態分析結果.酸化により炭素2重結合を失い、還元により一部炭素2重結合が復活している様子を示している.


論文は・・・残念ながら有料公開です。
タイトル
3D Bicontinuous Nanoporous Reduced Graphene Oxide for Highly Sensitive Photodetectors


伊藤良一