今回、東北大学東北大学原子分子材料科学高等研究機構 (AIMR)で研究を進めている3次元ナノ多孔質グラフェンを用いて光検出センサーに使用可能な多孔質炭素材料の開発に成功しました。
光に応答して電気を流す炭素材料は安価で環境にやさしい光検出のセンサーとして活用することが可能です。例えば、照度センサーでは光の明るさを電流の値として読み込むことによって自動的に照明の明るさを変更する用途で使用されています。本研究は、厚さのある3次元多孔質グラフェンを光検出部として使用することで、従来の2次元グラフェンの光吸収率と較べて10倍以上向上させることに成功しました。さらにその高い光吸収効率によってシリコン光検出器の10倍程度の感度を持たせることに成功しました。これは従来の光検出用2次元グラフェンは化学処理の過程で1枚のシート形状から細切れの破片になってしまうために、破片間を電子が飛びながら移動している為エネルギー効率が悪く、本来持っている性能を十分に発揮できないという問題点がありました。今回1枚に連続した3次元構造を保持し、かつ、多孔質構造による効率的な光吸収が可能な3次元ナノ多孔質酸化還元グラフェンを用いることによって電子がスムーズに移動することが可能になり、また、多孔質構造を持っていることから光の捕集能力そのものも炭素原子1個分の厚さしか持たない1枚のグラフェンに較べて格段に上昇し、その結果、光応答感度が劇的に上昇したと考えられます。この感度の向上により更なる装置の小型化が期待されます。
図(a) 酸化前の黒いナノ多孔質グラフェン、酸化後の白いナノ多孔質グラフェン(GO)、および、還元した酸化したナノ多孔質グラフェン(RGO)と走行型電子顕微鏡像. ナノ多孔質グラフェンの厚さは30μm. (b) 酸化グラフェンの透過型電子顕微鏡像. (c) 透過型電子顕微鏡高分解像. (d) 酸化グラフェンの炭素と酸素のサブナノメートル元素マッピング. (e) 電子エネルギー損失分光スペクトルによる炭素結合の状態分析結果.酸化により炭素2重結合を失い、還元により一部炭素2重結合が復活している様子を示している.
論文は・・・残念ながら有料公開です。
タイトル
3D Bicontinuous Nanoporous Reduced Graphene Oxide for Highly Sensitive Photodetectors
伊藤良一